栽培比較

栽培比較

有機 ほうれん草 一般 ほうれん草
種子 有機栽培種子・化学的処理されない種子 殺虫剤・化学薬品等の処理された種子
土壌 植物の生育に必要な微量元素を含む土壌微生物生育のしやすい土壌—そのためには植物性有機肥料の使用 化学合成農薬・除草剤・土壌改良剤等で土壌消毒された土壌—化学肥料の使用
播種 無処理種子—発芽率の低下 化学処理種—発芽率の向上
管理 病害虫の発生は自然にまかせる—20%程度収穫の減少 病害虫の発生は化学合成農薬で処理する—収穫の減少率微量
有機(オ-ガニック)ほうれん草
長所 短所
鮮度の持続性が長い 面積当りの収穫高が少ない
身体に悪影響を及ぼす化学合成剤が含まない 栽培管理に人手がかかる
ほうれん草の味が良い 病害虫の化学処理出来ないため、みばえが悪い
栄養価が高い 有機肥料の生産経費が高い

有機栽培とは

有機栽培とは、単に3年間化学合成農薬や化学肥料を施用しない圃場で栽培されただけでなく、収穫後から流通されるまでの間にも化学物質に汚染されず、また周囲の他の環境で栽培された作物と混ざらないことが条件の一つです。言い換えれば゛有機゛として適切に生産され、適切に収穫され、適切に保管されたものだけが「有機栽培」といえるのです。
化学合成農薬や化学肥料を認めないのは、わかりやすくいえば、自然の根源的なエネルギーである太陽の光や土中の微生物で分解しにくい物質とされているためです。化学物質は自然界のライフサイクルからは逸脱した存在といえるのです。現在の有機表示は、これらの基準を厳格に満たしたものとして農水省に認定された認証機関による認証として表示されるようになりました。

有機農産物と環境

有機農産物の安全は

有機農産物の表示に関する法律そのものは、国際レベルでの有機農産物の“品質”を保証するもので、それは直接“安全性”を約束する表示ではありませんが、総合的に見て、有機農産物では“安全性”の基準をクリアしている部分が多いといえます。
というのは、日本国内での正式な発表はまだですが、米国で農産物の安全な生産を行うという「GAP(適正農業基準)」というものと、有機農産物の基準の詳細を比較すると重なる部分が多いのです。重なる部分が多いというのは、科学的根拠から出てきた基準なので、厳密に明記されていることが多いということです。例えば、「堆肥は発酵ないし時間を経ているものを推奨する」などというのは同じ事を述べています。つまり、有機農産物を生産する過程で、“安全性”を確立する幾つかの手順にのっとっているのです。

有機農産物と特別栽培のちがい

「 有機栽培 」
有機栽培は、日本ではJAS(日本農林規格)により、国際的なCODEX(FAO〈国連食糧農業機関〉・WHO〈世界保健機関〉合同の食品規格委員会)の表示にもとづいた形で、化学農薬・化学肥料を3年以上使用していないことを原則にしたものです。また、認証システム自体はその品質管理の仕組みにもとづいています。

「 特別栽培 」
特別栽培については、国際的な取り組みはなく、海外ではIP(Integrated Product)またはIPMという近いものがあります。例えば米国でいうIPは、農薬削減と労力低減がテーマのために、遺伝子組み替え技術も、その選択肢として入っています。日本では有機以外で特別栽培農産物という枠組みがあり、そこではガイドラインによる表示がされていますが、実態を捉えるためのルールや仕組みが明らかではありません。

有機農産物(改正JAS法)と特別栽培農産物(ガイドライン)の定義

有機農産物 化学的に合成された肥料および農薬の使用を避けることを基本として播種または植え付け前2年以上(多年生産物の場合は、最初の収穫前3年以上)の間、堆肥等による土作りを行った圃場において生産された農産物
特別栽培農産物 無農薬栽培農産物 栽培期間中、農薬を使用しない農産物
無化学肥料栽培農産物 栽培期間中、化学肥料を使用しない農産物
減農薬栽培農産物 栽培期間中、化学合成農薬の使用回数を慣行的に使われる回数の5割以下に削減して栽培した農産物
減化学肥料栽培農産物 栽培期間中、化学肥料の使用回数を慣行的に使われる量の5割以下に削減して栽培した農産物

農薬や化学肥料を使用し栽培された農産物の影響

農薬も化学肥料も現在は見直しが進んでいますが、基本的に薬と表記されているので、使用する側にも使っても大丈夫だろうという誤解があります。しかし、農薬で普通物と書かれていても化学合成のものがほとんどで健康に影響しないものはほとんどありません。特に除草剤では、大半のものに内分泌撹乱物質(環境ホルモン)が不純物として入っていました。東京湾の海底で見つかる環境ホルモンの大半は、これらの除草剤に由来すると言われています。つまり、分析能力が進み、今までわからなかった身体的な影響が判明してきたわけですが、一方で農薬の開発も進んで、毒性を低めたため、環境影響が弱まり生物相が回復してきているという報告もあります。ただし、以前の長期間による農薬の残効性により、環境は元通りには回復するとはいえません。例えば、かつて使用した除草剤の主要物質が、河川にいまだ残っているため、その水系にいる魚類にも化学物質が含まれ、健康への影響を考えて、その魚類を喫食できないという事が北陸地方で起こっています。経済発展を優先して、増収を目的の中心にし、他の工業生産上の副産物を加工した化学肥料や農薬を使用してきたため、このような環境意識の時代を予測しなかったでしょう。

遺伝子組替え食品とは

遺伝子組み替え技術には幾つかの側面があり、一つには遺伝的に欠損などがある遺伝病あるいは病気による遺伝子異常に対して、劇的な効果を生む遺伝子技術関係があります。これと対極的に、省力化あるいは食糧増産の美名のもとに、特定の農薬に対して耐性を持たせたり、ある植物にそれ以外の遺伝子を組み込んで栄養素などを形成させるなどがあります。特に遺伝子組み替えで恐れられているのが、特定の昆虫に対して毒性を持たせたり、特定の薬剤への耐性を持たせるための技術により生まれた植物の暴走があります。実際に起こった例でも、ある除草剤に対する耐性を持たせた植物が自然界で同種の植物と交配したため、それら自然界にあったものも除草剤耐性になり、生態系バランスが崩れたり、米国では予想よりも収穫量があがらず大問題になるなど、科学者の予想したものとは違う、思いもよらない結果を出しています。最終的に米国でも、消費者が遺伝子組み替え商品か否かの判断ができるような表示をせざるを得なかったように、遺伝子組み替え技術の功罪とは、将来にわたる結果が全て予測できるわけではないというのが真実です。

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